こんなときどうする?



利益を産み出すために

 

 急激な経済状況の変化の中、いかに会社として存続させるかが重い課題としてのしかかってきています。基本的なところですが、もう一度利益を産み出す構造を見直してみましょう。

  

利益を産み出すには、基本的にはふたつ方法があります。ひとつは経費を削減すること、もうひとつは売上を増やすことです。

1.費用を削減する

売上が伸びない経営環境の中であっても、会社はなんとか利益を出さなければなりません。そのためには、売上高が伸びないわけですから、かかる費用を削減していく方法をとらざるを得ません。

@ 人件費

経費のなかで比重の大きいものは、人件費です。業種にもよりますが、人件費は売上総利益のおおよそ40パーセントから50パーセントを占めます(売上総利益=経費(一般管理費及び販売間接費)+利益)。ここにメスを入れざるを得ません。

・ 役員の報酬を削減する

・ 管理職の給与を削減する

・ 社員の賞与を削減する

・ 残業を取りやめる

・ 所定労働時間を短縮する

・ 全社員の給与を一律削減する(この場合、労働条件の不利益取扱に伴い、社員の同意が必要です)

A 人件費以外

人件費以外の費目についても見直しを検討しましょう。

・ 水道光熱費(休憩時間等こまめにスイッチを切ることから始めます)

・ 旅費交通費(車に乗らない、控える、など)

・ 地代家賃(大きな事務所から移転する、郊外へ引っ越す、車を減らす、など)

・ 広告宣伝費

・ 接待交際費、等

広告宣伝費は、これまでの印刷物を主体としたものからホームページ等を有効に活用することを検討することが考えられます。接待交際費は、一律に減らすことは大事でしょうが、使い道、使い先、使い方を見極めることが必要でしょう。

B 売上原価

 仕入れ単価を安くすることが考えられます。あるいは、これまでのおつきあいはあるものの、国外を含めて仕入先を他に探すことも検討材料でしょう。

 費用、とくに人件費の発生をおさえることは、確かに利益を産み出す上では大きな要素になります。しかし、そのことにより他の社員の仕事量や負担が増えることによる効率や生産性の低下、通常の業務の停滞が起こるようでは顧客にも迷惑をかけかねません。こうした懸念を和らげる手段のひとつにアウトソーシングがあります。最近では総務関係の業務ばかりでなく、採用、人事考課、教育訓練等人事労務業務などの間接業務までアウトソーシングする会社もあります。某会社などは開発だけを行い、設計製造までも外部委託するという形式を採用し、費用を低減しているところもあります。

2.売上高を増やす

経済状況が悪いときに売上を増やすのは並大抵のことではありません。先人の例を見ますと、かつての不景気のとき、松下幸之助翁の会社も受注の激減により製造部門の生産量が減りました。翁はその際、人員の削減はせず、製造部門の人を営業に回し、営業活動を増やしました。それで苦境を乗り越えました。秋田県にある某企業では製造、事務等の職務を固定化せず、定期的に配置を代え、たとえば誰かが病気などで休んだ場合でもすぐに対処できる体制を整えています。こうすることで多少の経済状況の変化であっても、柔軟な人材配置により環境に適応させることを可能にしています。だれもがどのポジションも守れるのは、会社の強みとなりますし、社員だれもが会社の現状を認識することにもつながります。

 

3.これからは計数管理を

利益を出すためには、利益管理を適正に行うことです。そのために、計数の管理をきちんと行います。過去のデータを根拠にして、計数、とくに財務諸表から読み取れる各勘定科目の比率(パーセンテージ)を見て、次年度の利益や売上高を検討します。

@ 過去の財務諸表(3年〜5年くらい)を取り出す。

A 勘定科目ごとの年ごとの比率の変化を確認する。

B 次年度の勘定科目の比率を決める。たとえば、人件費の見直ししたものを反映させる。

C 次年度の利益額を決める。

D 「損益分岐点売上高」の計算方法を使い、売上高を算出する。

E 売上高が達成可能と思われるかどうかを検討する。

F 達成が難しいと判断された場合、費用の比率の見直しをする。あるいは、計画する利益を見直す。

G 達成が可能と判断した場合、売上達成のための戦略を立てる。

 

大雑把に記しましたが、大事なことはもしこれまで無計画に進めていたとしたら、今回の経済危機を契機としてこれからは計数で管理してはどうでしょうか。そのことで出たとこ勝負的な経営方法から脱し、利益と売上高を確保するためにどうするか(すなわち、経営戦略とマーケティング戦略)に傾注することを可能にします。
 ただ売り上げ目標を社員に命じるよりは、社員一人ひとりがその根拠や理由を知っておいたほうが会社の現状を知ることができますし、戦略や計画の実施段階でもアイデアが出やすくなる可能性もあるでしょう。数値をきちっとおさえることでだれもが理解し、行動をとりやすい環境づくりをする、このことも経営者の大切な要素といえるでしょう。

「損益分岐点売上高」の計算については、別掲でご案内します。




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